

肥満ではないはずなのに、なぜかお腹だけがぽっこり出ている……。こうした悩みを抱えている人は、案外少なくないようです。なぜお腹だけが出てしまうのか、その主な原因として、次の4つが考えられます。
お腹周りの筋肉、特に体の表面ではなく内側にある腹筋(インナーマッスル)が弱いと、内臓が正しい位置で支えられず下垂して、お腹が出ます。また、筋肉量が少ないと代謝も悪くなり、脂肪を溜め込みやすい体になります。
長時間のパソコン作業などにより、猫背や前傾姿勢がクセになると、骨盤が横に開きます。すると、骨盤を支える大腰筋が衰え、内臓を正しい位置でキープできなくなってしまい、下腹部がぽっこりと出てきます。元々体のバランスが悪かったり、体の使い方にクセがあったりする場合も、内臓が下垂してお腹が出てくる原因になります。
水分不足や不摂生な食事、運動不足などによって便秘になると、腸に老廃物やガスが溜まり、お腹が出てきてしまいます。また、腸をはじめとする内臓の機能が低下すると、むくみや冷えを感じやすくなります。そうなってしまうと、代謝が下がって体が脂肪を蓄積しやすくなるため、さらにぽっこりとしたお腹になります。
女性の場合、ぽっこりお腹の原因として子宮筋腫や卵巣のう腫などの良性腫瘍をはじめとする婦人系疾患の可能性も考えられます。「経血量が多い」「ドロドロした血の塊が出る」「トイレが近い」などの症状がある場合や、食事や運動などの生活習慣を変えていないのに急にお腹が出てきたら、一度病院で検査してもらうことも検討してください。
ぽっこりお腹の原因が筋力不足と思われる場合は、腹筋を鍛えることで改善が見込めます。腹筋はお腹周りの筋肉の総称で、内臓を支えたり、体幹の動きをコントロールしたりすることが主な役割です。
まずは腹筋のパーツとそれぞれの役割を知っておきましょう。筋トレをする時は、どの筋肉を動かしているのかを意識することが重要です。

肋骨と骨盤をつなぐ一対の筋肉で、平たく縦に長いのが特徴。体幹部を前や横に倒す働き、回旋させる働き、骨盤を前方に持ち上げる働きがあります。日常の動作では、息を吐く、腹圧を高める、椅子から立ち上がる、排便や分娩の際にいきむなどの動作をサポートします。
お腹の横、脇腹部分にある筋肉で、表層部にあるものを「外腹斜筋」、その内側にあるものを「内腹斜筋」と呼びます。腹斜筋は、体幹のなかでも特にひねる動作と体幹の固定に関わる筋肉です。ここを鍛えることは、お腹のくびれを出す際にも効果的です。
腹筋のなかで最も深層にある筋肉です。この筋肉がコルセットのように胴回りを包んでいることで、脊柱が支えられて安定します。また、腹式呼吸において、息を吐く動作をすることで腹横筋が働き、腹腔内部を圧迫してお腹を凹ませます。ぽっこりお腹を引き締めるほか、腹圧を高めて排便をスムーズにしたり、臓器を正しい位置に固定したりする役割も果たしています。
筋力不足によってお腹がぽっこりしてしまっている場合は、腹筋トレーニングでしっかり鍛える必要があります。しかし、筋力不足の人が、上体起こしのような強度の高い腹筋をいきなり行うと、腰を痛める可能性があります。
まずは、体育座りの状態から床に寝転がり、おへそを見る腹筋から始めましょう。息を吐きながら、おへそを見て3秒キープ。息を吸いながら、また3秒かけて戻る動作を10回×3セット繰り返します。腹筋がギュッと収縮するのを感じられれば十分です。
慣れてきたら20回×3セットや10回×5セットにするなど、少しずつ回数を増やします。10回×3セット程度であれば毎日行っても体に負担はかかりません。毎日が難しければ、週2~3回を心掛けましょう。

慣れて少し強度を上げたくなった場合は、椅子の上にひざが90度に曲がる角度で足を乗せて、おへそを覗き込む腹筋トレーニングがおすすめです。この体勢であれば股関節が動かないため、腰を支点に上半身を起こして腰を痛める心配がありません。
腹筋を行うタイミングは、朝がおすすめ。朝に腹筋を行うことで、その日1日の代謝が高くなります。夜しか時間が取れない場合は、交感神経が優位になってしまうため、寝る直前は避けましょう。
お腹を凹ませるためには、腹筋トレーニングさえしていれば良いというわけではありません。
日々の生活のなかで、「バランスの良い食事」と「正しい姿勢」を心がける必要があります。運動に加えてこの2点も意識し、ぽっこりお腹を凹ませましょう。
糖質や脂質過多は、代謝の過程で余るとお腹周りに脂肪がつく原因となるので気をつけましょう。また、消費カロリーよりも摂取カロリーが多すぎても脂肪がついてしまいます。糖質や脂質を摂りすぎているようであれば控えめに。高カロリーのものを食べすぎないようにするなど、食事内容を工夫するようにしましょう。
筋トレをする場合は、炭水化物を少し減らしつつ、たんぱく質多めの食事を心がけましょう。1日あたり体重×1.0~1.2gのたんぱく質摂取を目指すのがおすすめです。
また、便秘が原因によるぽっこりお腹には、味噌や納豆、キムチなどの発酵食品やきのこなどの食物繊維が多い食材を積極的に取り入れれば、腸内環境が整い、便秘を予防することができます。
立っている時や歩く時に背筋の伸びた姿勢を維持するだけで、自然と腹筋に力が入ります。こまめに正しい姿勢を心がけることが大切です。姿勢が悪いと腹筋がうまく使われないので、ぽっこりお腹に繋がります。
椅子に座る時は、深く腰掛けて背筋をまっすぐにし、足を床にしっかりとつけましょう。膝は直角に保ち、足裏全体で地面をしっかりと捉えると脊椎が自然なカーブを保つことができます。その結果、内臓への圧迫が軽減し、腹部が自然と引き締まります。
また、定期的に立ち上がり、簡単なストレッチや軽い運動を行って筋肉の固まりを防ぎ、血流を改善して、脂肪の燃焼を促しましょう。
筋力不足のぽっこりお腹は、腹筋を鍛えつつ、日々の生活習慣を見直すことで少しずつ改善されます。腹筋が鍛えられると、スッキリしたお腹と同時に、姿勢の改善や体幹が安定するなどのうれしい効果も期待できます。
小さな努力をコツコツ積み重ねて、理想のお腹周りを手に入れましょう。