運動で認知症を予防しよう! 脳の健康を保つトレーニングとは?
健康コラム

運動で認知症を予防しよう! 脳の健康を保つトレーニングとは?

2024/12/25
高齢化社会の影響もあり患者数が年々増加傾向にある「認知症」。実は、若い頃からの定期的な運動習慣が老後の認知症リスクを下げるという研究結果があるんです。今回は、認知症の解説と認知症予防におすすめの運動法をご紹介します。
高齢化社会の影響もあり患者数が年々増加傾向にある「認知症」。実は、若い頃からの定期的な運動習慣が老後の認知症リスクを下げるという研究結果があるんです。今回は、認知症の解説と認知症予防におすすめの運動法をご紹介します。

若い人も他人事じゃない! 知っておきたい認知症の基本

認知症の約7割が「アルツハイマー型認知症」

脳は、私たちの体と心をコントロールしている重要な器官です。認知症とは、何らかの原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりすることでさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。

認知症には、いくつかのパターンがあります。認知症の約7割を占めるとされる「アルツハイマー型認知症」は、アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積することで、神経細胞が死んでしまい、脳が萎縮して起こります。次いで多い「脳血管性認知症」は、脳の血管詰まったり破けたりして脳卒中(脳梗塞や脳出血)が起こり、脳に血液がいき渡らなくなることで発症するものです。

また、認知症の一歩手前の「MCI(軽度認知障害)」という状態も存在します。認知症を「一人暮らしが困難なほど認知機能が低下した状態」とすると、MCIは「同年代と比べて認知レベルが低下しているものの、日常生活を正常に送れる状態」です。MCIは、1年で約5~15%の人が認知症に移行する一方で、運動や食事に気を遣うことで約16~41%の人は健常な状態に戻る可能性が高いことがわかっています。
 

認知症はどうやって進行していく?

認知症の状態は、初期(軽度)、中期(中等度)、末期(重度)と徐々に進行していきます。主に以下5つの症状が徐々に現れ、進行度とともに悪化します。

  1. 記憶障害
    新しいことが覚えられなくなる
     
  2. 見当識障害
    自分が今置かれている状況(日時・場所・他人との関係性)がわからなくなる
     
  3. 理解・判断力の低下
    言われたことが理解できなかったり、目の前の事柄を処理しきれずに混乱したりする
     
  4. 実行機能障害
    計画を立てて行動することが難しくなる
     
  5. 失行・失認・失語
    今までできていた動作ができない(失行)、五感の働きに異常をきたす(失認)、文字を読んだり書いたり、言葉を話したりすることが難しくなる(失語)

初期に起こる症状の代表格は、記憶障害からくる「もの忘れ」。ここでいうもの忘れとは、「昨日の夕食メニューが思い出せない」といったものではなく、「夕食を食べたこと自体を忘れてしまう」といったもの忘れを指します。

このほか、すぐにものを失くしたり、普段やり慣れている家事ができなくなったりと、理解力や判断力の低下、実行機能障害が見られることもあります。

初期から中期にかけて記憶障害が進み、より重いもの忘れが頻繁に現れるようになるほか、自分が今いる場所や日時などがわからなくなる見当識障害が現れます。

末期になると、物事への関心が薄くなり、家族が家族であることが認識できず、スムーズにコミュニケーションを取ることが難しくなってしまうことも珍しくありません。

今までの動的な症状は収まるものの、寝たきりとなる場合が多く、食事や排泄などの介助が常に必要となります。

「自分にはまだ関係ない」と思っている人こそ、認知症が自分や家族、周囲の人たちにどのような影響を及ぼすのかを、一度想像してみることが大切です。

 

認知症の患者数は、将来的に増加する見込み

現在、高齢者の約12%が認知症、15%がMCIであると推計されています。80歳代の後半になると男性の33%、女性の37%、95歳を過ぎると男性の37%、女性の55%が認知症であることがわかっています。

「令和6年版 高齢社会白書」によると、2040(令和22)年には認知症の高齢者数は584.2万人(有病率14.9%)、MCIは612.8万人(有病率15.6%)まで増加すると考えられています。

 

認知症のリスクを高める原因の一つは「生活習慣病」

認知症は、生活習慣病である糖尿病、高血圧、肥満、脂質異常症と深い関わりがあります。これらを抱えている人は、健康的な人よりも認知症を発症しやすい傾向にあります。

糖尿病の人は、健康な人の2.1倍アルツハイマー型認知症にかかりやすいことがわかっています。また、40~64歳の間で高血圧だった人は、高齢期(65歳~)になった際に、アルツハイマー型認知症や血管性認知症になりやすいといわれています。

加えて、高血圧や脂質異常症が原因で血液の流れが悪くなると、脳卒中の危険性が高まり、脳卒中を主な原因とする脳血管性認知症のリスクも同じく高まります。

認知症は本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って発症するため、生活習慣病だけが原因とはいえません。しかし、生活習慣病の予防が、結果として認知症の予防にもつながることは確かです。

生活習慣病は、若いうちからの生活習慣や運動習慣が大きく影響を及ぼすもの。多忙やストレスにより生活が乱れやすい若年層こそ「まだ若いから、認知症予防を考えるにはまだ早い」とは思わずに、今からできる対策をコツコツ積み上げていくことが大事なのです。 
 

 

認知症の予防は、規則的な生活習慣と適度な運動が大切

認知症の予防には、健康的な「食事」「睡眠」「運動」が大切です。

食事

アルコールや脂質、塩分の摂り過ぎや、栄養素の偏った食事などは、生活習慣病および認知症発症リスクを高めます。食事はなるべく決まった時間に、旬の食材を楽しむような変化に富む食事を心がけましょう。人とコミュニケーションを取りながら食べることで、認知機能の衰えも防げます。

睡眠

不眠や過眠といった睡眠障害に悩む人は、健康的な人と比べて認知症を発症するリスクが約1.2倍あるといわれています。睡眠時間が5時間未満、あるいは8時間以上の人は、5時間以上7時間未満の睡眠時間の人と比べて、認知症を発症するリスクが高いこともわかっています。 日ごろから、適度で規則正しい睡眠を心がけましょう。

運動

運動習慣がない高齢者は、週2~3回の運動習慣がある高齢者と比べて認知症になるリスクが1.82倍といわれています。 運動は脳の血流量や神経細胞の増加につながるだけでなく、認知機能の低下に影響をするメンタルヘルスの不調を減らし、睡眠を良好にする効果も期待できます。

 

認知症予防のための運動方法

認知症予防のための運動は、運動内容よりも「継続すること」が大事です。ハードで激しい運動をする必要はなく、楽しんで毎日続けられる程度の運動を見つけてみてください。

筋力トレーニングは、認知症予防に効果があるとされています。

おすすめなのは、1種目だけでなく、複数の種目を組み合わせて行うこと。筋力トレーニングは1種目10~15回×2~3セットを目標に自分の体調に合わせて行いましょう。

筋肉がつきにくい上半身、足腰の筋肉を鍛えるための下半身トレーニングなど、全身を満遍なく行うと効果的です。そして筋トレと合わせてウォーキングや水中歩行などの、息が少し弾むくらいの運動も行えるとベストです。

 

 健康貯金は若いうちから! 今できることを積み上げよう

認知症予防は、今からできることをコツコツ積み上げていくことが大切です。ここで言う認知症の予防とは「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにする」という意味であることも、同時に覚えておきましょう。

老後になってから運動を始めるのは、なかなか難しいことです。しかし、若いうちから運動を習慣化しておくことで、いつまでも丈夫な体を保ちやすくなります。

年齢に関係なく、今が一番若いと考え、運動、食事、睡眠といった、今日からできる基本的な生活習慣を意識していくことから始めてみてください。

 

<参考>

令和6年版 高齢社会白書

認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究

認知症予防マニュアル

知っておきたい認知症の基本

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