
運動を始めようと思った時、何を行うとより効果的なのかは目的によって異なります。
例えば、筋トレを中心にやった方がいいのか、それとも有酸素運動が大事なのか。また強度もどのくらいがいいのかーー。健康維持のためにする運動とダイエット目的の運動では、やる内容や進め方が変わってきます。
運動を始める時にはまず、「減量したい」「筋肉をつけたい」「ずっと健康でいたい」「気分転換をしたい」など、目的を明確にしましょう。目的に合った運動の種類、強度、頻度を知り実践していくと、より効果を実感しやすくなるでしょう。
目的に合わせた運動のポイントを解説する前に、基本の種類や強度について解説します。
運動には大きく分けて「有酸素運動」と「無酸素運動」があり、両者を目的に合わせて適切に組み合わせることで、期待する効果が得やすくなります。
体内の酸素を使って身体を動かす運動。主に脂肪と炭水化物をエネルギー源として消費します。そのため体脂肪を減少させる効果があるほか、心肺機能の向上、持久力アップ、ストレス解消にも効果的です。ただし、やり過ぎると筋肉を消費してしまうため、注意が必要です。
体内の酸素を使わずに筋肉内のグリコーゲン(糖質)エネルギーとする運動。短時間で高負荷をかけるため、筋トレであれば筋線維を強化して筋肉量の増加につながります。またその結果、基礎代謝の向上が叶えられます。
一言で運動と言っても、その種類によって「強度」が異なります。椅子に座って安静にしている状態を1としたときに、その何倍の強度があるかによって運動強度を考えます。例えば、ストレッチは低強度、ウォーキングは中強度、ジョギングは高強度です。
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運動の目的によって、適した強度は異なります。基本的に、健康維持やリラックスが目的の場合、あまり高い強度は必要ありません。
一方で、体力や筋力をつけたい場合は強度の高い運動を選ぶとより効果が得やすくなります。

まずは、低~中強度の運動を1日に数回、1回あたり10分程度を目安にして、生活の中に組み込んでみましょう。習慣化できるようになったら、徐々に歩行程度の運動(中強度)を1日60分以上(8,000歩目安)行います。加えて、息が弾み汗をかく程度(中強度以上)の運動を週60分以上行うとより効果的です。筋トレは週2~3回が目安。
いつでもOK
現時点で運動習慣がまったくない人は、「エレベーターに乗らずに階段を歩く」「普段は車で行く場所に徒歩で行く」など、日常の中で体を動かすことを意識して、徐々に運動頻度を上げていきましょう。
なお、運動の頻度については、「1回数分ずつこまめに行う」でも「まとめて行う」でも、健康増進効果に大差はありません。自分の生活スタイルに合わせて好きなタイミングで運動を行ってください。一週間の総計で目標の運動量を達成できているか、チェックするのがおすすめです。

1日20分くらいを目安に体がぽかぽかするくらいの有酸素運動。「気持ちいい」「スッキリした」と感じられる程度の軽さ(低~中強度)を目安にして行いましょう。
日中(特に午前中)、気が向いたとき、気分転換したいとき
運動負荷よりも、自身の気持ち優先で強度は調整しましょう。深く呼吸できるようなウォーキングやサイクリング、ストレッチ、ヨガなどがおすすめです。
屋外で運動する場合は、可能であれば日中(特に午前中)に。日光を浴びることにより、幸せホルモンと呼ばれる物質「セロトニン」を合成できるため、リラックス効果が得られやすくなります。
また、セロトニンは夜になると、睡眠を促す作用を持つ「メラトニン」に変化するため、日中に太陽を浴びることは、睡眠の質の向上にもつながりやすいです。

有酸素運動は、できるだけ毎日、1日あたり200~300キロカロリー消費できる中強度の運動(ジョギングなど)を行いましょう。
それに加えて、筋トレを週2~3回、各部位で10~15回 × 1~3セット行い、全身を満遍なくトレーニングすることを意識します。
体脂肪を減らしたいなら食前、筋肉をつけたいなら食後
ダイエットの基本は「摂取カロリー<消費カロリー」。体脂肪を1キロ減量するには、7200キロカロリーほど消費する必要があるとされています。健康的に痩せるためには、食事の栄養バランスを大事にしながら、効率よくカロリーを消費できる運動を日常の中に取り入れていきましょう。
例えば、ジョギングなど「中強度の有酸素運動を比較的長めに行う」ことで、効率的にエネルギーを消費できます。また、筋肉をつけると基礎代謝が上がり、脂肪を燃焼しやすい体になるため、筋トレも合わせて行うのがおすすめです。
筋トレを行う際は、まずは筋トレをして、その後に有酸素運動を行うのが効果的。 筋トレを行うことで分泌される「成長ホルモン」には、脂肪燃焼を促進する働きがあるためです。

有酸素運動は、週3回以上、1日あたり30分ほど、中~高強度(主観的に「ややきつい」と感じる程度の強さ)の運動を行いましょう。筋トレは、週2~3回、低負荷で30分以上。
できる時に
体力づくりが目的であれば、持久力をつけるための運動がおすすめ。有酸素運動と無酸素運動を組み合わせて行いましょう。順番はダイエットとは逆で、「有酸素運動→無酸素運動」の順番で行うのが効果的です。
有酸素運動を行うと心拍数が上がり、たくさんの酸素が体内に取り込まれ、体が温まります。その状態で筋トレなどの無酸素運動を行うと、心肺機能が高まり、筋肉を効率的に鍛えることができます。
有酸素運動の種類はランニングや水泳など、中~高強度のものを選んで、心拍数を意識しながら取り組むと良いでしょう。筋トレを行う際は比較的軽い負荷で長時間行うと、筋肉の持久力がつきやすくなります。

筋肉の休息日を設けることが大事なので、週に2~3日が推奨。1種目あたり、8~12回を2~4セット行うのが目安です。負荷は最初は軽めのものから、慣れてきたら少しずつ重くしていきます。
空腹すぎない時
健康維持を目的とした筋力アップを目指す場合は、「無酸素運動→有酸素運動」の順番に行うと効果的です。
注意したいのは、有酸素運動は「ほどほど」にしておくこと。有酸素運動は脂肪をエネルギー源としますが、脂肪が足りなくなると筋肉を分解してしまうため、せっかく筋肉を鍛えても無駄になってしまいます。
また筋肉は、2~3日の休息と栄養を摂ることで回復し、筋肉が強くなるため、毎日行うのは避けましょう。ただ、同じ部位を続けて筋トレしないことが大事なので、今日は肩周り、明日は背中、明後日はお尻周り…とトレーニングする部位を変えれば、連日行っても問題ありません。
目的に合った運動を行うことは、手応えを感じやすくすることでもあります。まずは、自分が何のために運動するのかを明確にして、「こうなりたい」という理想を描いてみましょう。
目的が何であれ、運動は継続することで効果を発揮します。せっかく最初の一歩を踏み出したのなら、ぜひ継続を目指して、理想の自分に一歩ずつ近づいていきましょう。
<参考>
「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:全身持久力(最高酸素摂取量)について