
「疲れ」とは、エネルギーが不足することにより、体を動かすことが難しくなる状態で、休みたいという欲求を伴います。「疲れ」の種類は、主に次の3つです。
以下のような症状が現れたら、疲れているサインかもしれません。

肉体的疲労と精神的疲労は、発生メカニズムが異なります。
肉体的な疲労で代表的なものは、筋肉を動かすエネルギー源であるグリコーゲンやクレアチンが枯渇し、一方で乳酸が蓄積することで発生するとされています。
乳酸とは、グリコーゲンが分解される際に発生する、筋肉の収縮を阻害する働きを持つ疲労物質のこと。強度の高い運動をすることで、筋肉のエネルギー供給が追いつかず、乳酸が体に蓄積することで疲れを感じます。
一方で精神的疲労は、睡眠不足やストレスによって発生するコルチゾールや炎症性物質、活性酸素といったものが、脳の神経細胞を傷つけることや、あるいは日々の活動でアデノシンやグルタミン酸といった疲労や眠気を感じる物質が増加することで発生します。
私たちは、起きている間は様々な神経細胞が活発に動いて活動をしていますが、その過程で老廃物のようなものが生じます。これが蓄積すると、疲労感を感じたり、認知機能が低下したり、眠気を感じたりします。さらにストレスが加わると、神経を傷つける物質も蓄積してしまうことで感情や体調が不安定になるのです。
日常生活に潜む「疲れ」の原因は、主に「不規則な生活・睡眠不足」「偏った食生活」「運動不足」などが考えられます。それぞれ、原因となる理由と改善方法を解説します。
食事や睡眠の時間が日によって違う不規則な生活を続けていると、体内時計がうまく働かなくなって自律神経のバランスが崩れたり、眠りの質が悪化したり、睡眠不足になったりします。
睡眠は、疲れの回復にとても重要です。人間は睡眠中に筋肉の疲労をリカバリーしたり、脳の老廃物を掃除したりしていますが、うまく眠れなければこの機能が働きません。
特に精神的な疲労は、睡眠で脳を休ませなければリカバリーできません。成人であれば1日6時間以上、しっかりと質の良い睡眠を取りましょう。
栄養バランスが偏った食生活や暴飲暴食も、疲れの原因となります。
食べ物を分解する際に働く肝臓に負担がかかり、肝臓のエネルギーが不足したり、分解されるはずだった毒素がそのまま体に溜まってしまったりすることが原因です。
また、寝る直前の食事や寝酒は睡眠の質に大きな悪影響を及ぼします。朝昼晩なるべく決まった時間に食事を取ることを意識し、食べ過ぎ・飲み過ぎは日頃から控えることが重要です。
運動不足も、実は疲れの原因とされています。体を動かさないことによって血液の流れが悪くなると、歩いたり階段を登ったりといった日常的な動作だけでも疲れやすい状態に。
さらに、筋肉には心身の疲労物質を分解する働きもあります。しかし、その筋肉が少ないと疲労物質が蓄積されてしまい、常に心身が疲れ気味な状態になってしまいます。長時間同じ姿勢を取り続けることはやめて、こまめに体を動かし、運動する習慣を身につけましょう。
疲れの予防に大切なのは、継続的な運動です。
まずは、ウォーキングやジョギングなど、心肺機能を高めたり、持久力をつけたりするのに有効な運動にチャレンジしてみましょう。
肉体的疲労、精神的疲労の双方に効果的です。長時間ハードな運動をする必要はなく、毎日続けられる強度で無理なく続けていくことが重要になります。
慣れてきたら10分ずつでも運動の時間を増やしたり、強度を高めたりすることで、より予防効果を期待できます。

機会があれば、定期的にバスケットボールやフットサル、テニスといったスポーツを楽しむのも良いでしょう。仲間がいたり、目標ができたりすると、毎日の運動のモチベーションにもつながります。
また、疲れの軽減にも運動は効果的です。
疲れを感じた時にあえて軽く体を動かすことで、筋肉の血流が増加し、疲労物質の排出や分解が促されて、疲労回復につながります。運動後に心身がどこかスッキリするのはこのためです。
特に早歩きや軽いジョギングなどのリズミカルな運動は、脳の血流も増加させるだけでなく、うつや不安を和らげる作用もある脳内物質のセロトニンも分泌させるため、肉体的な疲労だけでなく、精神的な疲労にも効果を発揮します。
肉体的な疲労が強い時は無理をせず、ストレッチなどの軽い運動を行いましょう。
深呼吸を繰り返しながら体を伸ばすことで、凝り固まった筋肉が緩み、ストレス解消にも繋がります。
ポイントは、一つの部位を20秒以上、呼吸を意識しながら伸ばすこと。脚をたくさん使った日は脚を、デスクワーク続きの日だったら首や背中を、というように、その日の体に合わせて伸ばす部位を選んでみてください。
日々のこまめな運動は、疲れの予防にも疲労回復にも役立ちます。それだけでなく、毎日の睡眠や食事の改善にもつながるきっかけになることも。
疲れに悩んでいる人は、まず運動を毎日のなかに取り入れてみましょう。
<参考>
労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023 年改正版)
令和 4 年度 過労死等に関する実態把握のための 労働・社会面の調査研究(厚生労働省)