
体脂肪とは、体内に蓄積された脂肪のことです。エネルギーの蓄積や細胞膜の形成、体温の保持、内臓を外部の衝撃から守るなど、さまざまな役割を持っています。体重に占める体脂肪の比率をパーセントで表したものが、体脂肪率です。
体脂肪には「内臓脂肪」と「皮下脂肪」の2種類があり、蓄積される部位や特徴が異なります。

皮下脂肪は、皮膚と筋肉の間につく脂肪で、皮膚の上から指でつまむことができます。お尻や太ももなどの下半身や、二の腕やお腹まわりなどに集中してつきやすいのが特徴です。
特に女性につきやすいとされ、女性ホルモンの分泌においても重要な役割を果たします。また、保温効果があり、体温を維持する働きもあります。
内臓脂肪のように生活習慣病になるリスクは低いものの、増え過ぎると体重が増え、腰や膝などに負担がかかることも。皮下脂肪は時間をかけて少しずつ蓄積される脂肪で、一度ついてしまうと内臓脂肪に比べて落としにくいのが特徴です。
内臓脂肪は、主に腹筋の内側、腸や胃などの周りに多く蓄積する脂肪です。体のエネルギーが不足した時に素早くエネルギーに変換される脂肪ですが、増え過ぎるとメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)を引き起こす可能性があります。
また、高血圧や動脈硬化を引き起こす原因となり、放置すると脳梗塞や心筋梗塞などの血管病を引き起こすリスクが高まります。
一見太って見えない人でも、内臓脂肪が蓄積されていることがあるので注意が必要です。内臓脂肪は男性につきやすいとされています。皮下脂肪よりもつきやすく、落としやすいのが特徴です。
体脂肪が蓄積される主な原因として、次の2つが考えられます。
食べ過ぎにより摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、消費されなかった栄養のあまりが脂肪として体に蓄えられていきます。
食事の回数が不規則でまとめ食いをしたり、無意識に何かを食べてしまったり、ながら食いの習慣があったりする人は、知らずしらずに食べ過ぎてしまい、体脂肪が増えている可能性があります。
血糖値を下げるために膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンには、血中の糖分を脂肪に換えて体にため込む働きがあります。血糖値が緩やかに上昇するのであれば問題ありませんが、急激に上昇するとインスリンが過剰に分泌され、脂肪をため込みやすくなります。
早食いやドカ食い、炭水化物に偏った食事スタイルは血糖値の急上昇を招きやすいので注意が必要です。白米やうどん、精白した小麦で作ったパンなどのメニューは血糖値が上がりやすいため、血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維が豊富な玄米やそば、全粒粉パンなども上手に取り入れてみるのもおすすめです。

体脂肪率の測定は、家庭で簡単に使える体組成計を使うことがメジャーになっています。標準的な体脂肪率は、成人男性で10%~21%、成人女性で20~30%になります。男性は25%、女性は30%を超えると肥満気味といえます。
体脂肪率は高過ぎても低過ぎても健康に悪影響を及ぼすものです。それぞれ、具体的なリスクを紹介します。

体脂肪率、特に内臓脂肪レベルが高い人は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を引き起こしやすくなります。
心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの命にかかわる重大な病気につながる可能性もあるほか、大腸や食道、膵臓、腎臓などのがんを引き起こす原因となるケースもあります。女性の場合は、月経不順と関係するとの報告もあります。
体脂肪率が低い人は、免疫力が低下して体調不良を起こしやすくなったり、外部からの衝撃を受けた際のダメージが大きくなるといったリスクがあります。
女性の場合は、ホルモンバランスの調整がうまくいかなくなり、体脂肪率が15%以下になると月経不順が増え、10%以下になると無月経となってしまう可能性が高まります。
健康的な生活を送るためには、普段から適正な体脂肪率のキープを心掛けることが重要です。

体脂肪を減らしたいならば、少しきついと感じて軽く息があがるような「中強度」の有酸素運動がおすすめです。有酸素運動は、脂肪を主なエネルギー源とする運動であるため、脂肪燃焼に大きな効果があります。
心拍数120~130くらいのウォーキングや階段の上り下りなどを1日トータル30分ほど、週2回からを目標に取り入れてみてください。
これまで、脂肪燃焼のための有酸素運動は「続けて20分以上するべき」と考えられていましたが、近年の研究では、1日に30分の運動を1回しても、10分の運動を3回しても、減量効果に差はないと言われています。短時間でも積み重ねで合計で20分以上運動できていれば同じなのです。
また、有酸素運動に筋トレを組み合わせるのもおすすめです。筋肉量が増えれば、その分基礎代謝も上がるため、脂肪を燃やしやすい体をつくることができます。
体脂肪を減らすためには、ぜひ有酸素運動とセットで取り組んでほしいところ。先に筋トレを行ってから有酸素運動を行うことで、より効果的に体脂肪を燃焼させることができます。
増え過ぎた体脂肪を落とすには、運動習慣に加えて、食生活の改善が重要なカギとなります。
運動ばかりに気を取られて食事の管理ができていないと、せっかくの運動効果を感じられません。体脂肪率を下げるためには、食事にも気を配りましょう。
まずは、1日3食で腹八分目を心掛けましょう。血糖値の急上昇を防ぐために、なるべく規則正しい時間間隔で食事を摂ることも大切です。一口あたり30回の咀嚼を意識して、ゆっくりと食事を楽しみましょう。
栄養バランスは、糖質や脂質の摂り過ぎに注意して、高たんぱくで低カロリーな食材を意識的に選びましょう。食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素も重要です。
体脂肪率は体型や見た目だけでは判断しきれず、細身に見えていても実は体脂肪率が高いということも。体脂肪率は高くても低くても、健康上のリスクが発生するため、機会があればぜひ数値を計測してみましょう。
標準的な体脂肪率をキープするためには、適切な運動と食事を心がけることが重要です。小さなことからコツコツ始めていきましょう。
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